真木

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梅雨空の曇った天に雨模様とともに見上げる真木、あるいはその合間の真っ青な中空に向かってそそり建つ真木。鉾の真木には上から順に、鉾頭(ほこがしら)、大幡(おおはた)、天王人形(小屋根、岩=台、含む)、関、角幡(かくはた)、榊、しゃぐま(飾り結び)、しゃぐま垂れ、網隠し(あみかくし)などの真木飾りがある。

鉾頭(ほこがしら)

函谷鉾の鉾頭はその由来である孟嘗君(もうしょうくん)は「鶏鳴狗盗(けいめいくとう)」の故事から「函谷関の山稜にかかる三日月」を表わしている。山稜を表わす三角形は白麻を二枚、底辺約六十三センチメートルの竹骨に合わせて真木先端に取り付けられ、両端約三十センチメートルの白銅銀鍍金製で天保十年(一八三九)の再興の際に新調された三日月が真木先端に二枚の三角形の山稜の頭頂部に挟まれて取り付けられる。鉾頭の三日月は別に延宝五年(一六七七)製のものもある。







大幡(おおはた)

鉾頭から二メートル足らず下に大幡が付けられる。縦約百五十センチメートル、幅約十二センチメートルの赤地に白い子筋を持ち、羅紗製のように重く、風になびくことはまず、ない。








天王台ともいわれるが、函谷鉾では"関"と呼ぶ。長さ約八十センチメートル幅十五ミリメートルほどの黒塗りの割り竹を縦横三十センチメートルほどの板(底板)を挟み、真木を中心に束ねたもので、束ねた下部三十センチメートルほどを真木にロープでぐるぐる巻きにして固定します。板の上部には黒塗り割り竹の先を十センチメートルほど突き出した形で石垣模様の布を巻き、函谷関の関所を表現している。板の上(布に巻かれて地上からは見えない)には真鍮製で金鍍金された雌雄の鶏(函谷関の門を開ける夜明けの"とき"を知らせる鶏)が備えられる。







角幡

関のすぐ下に藍地の縦四十五センチメートル横三十センチメートルほど、白い子持ち筋と木瓜紋(帽額紋)が白く染め抜かれた角幡が付けられる。これが風にひらひらと泳ぐ姿は優雅なものである。







しゃぐま

角幡から下が櫓本体から二本繋いだ本真木(角幡から上は竹真木)で、二箇所の繋ぎ(僅かな水平部分を残して斜めに切れ込みがある)の部分を補強するために縄がぐるぐる巻かれる。この縄の飾り結びが「しゃぐま」で"島田の髷(まげ)"のような形をしているが鉾によっては形状も微妙に違う。五輪塔を表わすともいわれるが数はそれぞれ五,七あるいは九(奇数が好まれていた)個あり、函谷鉾では七つ施される。









しゃぐまの上から五番目と六番目の間に榊がつけられる。函谷鉾の榊は他の鉾のように左右にはっきりと分かれた状態ではなく(放下鉾は桧扇型と呼ばれる半円形だが)、榊受け台に扇形の支持枠で固定されるので、やや上方に広がるように"活ける"ような形で取り付けられる。この榊には無数の紙垂(しで=白い紙の御幣)が付けられるが、函谷鉾では十一日午前十時ごろの真木建ての際に一般の方にも付けて戴いている。この紙垂は町内役員が五月から六月にかけて作成される手作りのものである。榊の中央の真木のところには金幣が付けられる。これは真木が神の依り代(よりしろ=神様がやどるところ)とされるからである。






しゃぐま垂れ、網隠し

榊のすぐ下から屋根にかけて紅い三角帽子のような網隠しがある。真木を支持固定するために櫓本体の上部四隅に渡される禿柱(かむろばしら)や縄を隠すためのもので、函谷鉾は緋羅紗地の前面に木瓜紋、後面に巴紋の神紋が白く付けられている。網隠しの上端には紺色の「しゃぐま垂れ」が付けられるのも美意識の表れである。また榊の下部あたりからは数本のロープが垂らされるが、これは屋根方(巡行中に新町通などの屋根回りの障害物に対応して屋根を守る)の命綱である。



しゃぐまから下、榊、網隠しなどは本体を組み立てる「手伝い方」の仕事で、角幡から上が町内関係者の仕事である。榊の紙垂は一般の方を含めた全員で付ける。真木の天井から屋根裏部分に鉾立て前、保存会役員が代参、受けて帰った愛宕神社の「火廼要慎」の御札が貼り付けられる。



祇園祭について、そして函谷鉾・保存会について、詳しくご紹介しております。「鉾や山を見る」・「巡行を楽しむ」だけでも良いのですが、その歴史、由来、願いなど多くの人々が積み上げてきたことを知って、実際の鉾や山をご覧いただくとより深く楽しんでいただけるのではないでしょうか。

そんな願いを込めてご紹介しておりますので、ぜひじっくり「函谷鉾」を知ってください。